
消費財
本社と工場で食い違う「品目の粒度」を解きほぐし、担当者の頭の中にあった変換ロジックを製造指図の自動連携へ
製造業 | 品目マスタ・製造指図 | AI利活用に向けたデータ整備サービス
プロジェクト概要
| クライアント | 大手製造業(年商1兆円超・多工場体制) |
| プロジェクト | 基幹システム刷新(SAP導入)/200名規模 |
| 対象領域 | 品目マスタ、製造指図(PP領域) |
| 対象規模 | 製造指図の起点となる取引伝票 月間10万件(ヘッダベース) |
| 担当フェーズ | 構想策定〜要件定義(約6か月) |
| 関与形態 | 業務サイドのコンサルタントとして、マスタチーム/PPチームのリードを兼任 |
課題
本社が発注に用いる品目と、工場が製造に用いる品目とで粒度が異なり、両者を機械的に突き合わせられない
現行運用では、本社からの発注データを工場の担当者が頭の中で製造指図に変換し、手作業で登録している
この変換ロジックが文書化されておらず、新システムへ引き継げる形になっていない
BeyondWellのアプローチ
①工場側の既存システムと現行データを読み解き、担当者の判断が実際に何を根拠としているかを構造として復元
②本社・工場の双方と膝を突き合わせる整理活動を立ち上げ、粒度差の解消方針を合意形成の場で決着
③品目マスタの項目要件定義、リスト値、レコードデータの整理までを一貫して担当
成果
①月間10万件規模の取引伝票を対象に、属人的な変換作業を発注データ起点の製造指図自動連携へ置き換える業務・データ設計を確立
②担当者の経験に依存していた品目粒度の変換ロジックを、本社・工場双方が合意した定義として明文化
③構想策定から要件定義までを約6か月で完了し、後続フェーズが着手可能な状態を整備
なぜ、これはツールで解けなかったのか
対象となる取引伝票は月間10万件(ヘッダベース)に及ぶ。この規模の指図登録が、担当者の頭の中にある変換を経て手作業で行われていた。
データ整備というと、表記ゆれの統一や重複の排除といった作業を思い浮かべる方が多い。しかし本件で立ちはだかったのは、そうした「汚れ」ではなく、同じものを指しているはずの品目が、本社と工場とで異なる単位に切られているという構造そのものであった。
本社は調達・販売の視点で品目を捉え、工場は製造工程の視点で品目を捉える。どちらの持ち方も、それぞれの業務においては正しい。正しいもの同士が噛み合わないため、名寄せツールにも変換ルールにも落としようがない。現場では、この差分を長年にわたり担当者が経験で埋めてきた。発注データを見て、どの工程で何をどれだけ製造すべきかを組み立て、手で指図を登録する。属人化ではあるが、業務は回っていた。
問題は、この暗黙の変換をそのまま新システムへ持ち込めない点にある。自動連携を実現するには、担当者の判断を明文化されたロジックへ翻訳しなければならない。すなわち本件のデータ整備とは、データを綺麗にする作業ではなく、業務の意味を読み解いて再定義する作業であった。
どう解いたか
当社コンサルタントはまず、工場側の既存システムと現行データを読み込むことから着手した。担当者へのヒアリングだけでは「経験でやっている」以上の答えは出てこない。実際のデータに現れた規則性と例外を突き合わせ、判断の根拠を仮説として組み立て、現場に当てて検証する。この往復を繰り返すことでしか、暗黙知は形にならない。
同時に必要だったのが、本社と工場の合意形成である。粒度を揃えるということは、どちらかが持ち方を変えるということであり、業務負荷の移動を伴う。当社はマスタチームとPPチームの双方をリードする立場から、両者が同じテーブルに着く整理活動を発足させ、論点を可視化した上で意思決定を進めた。データの問題として持ち込まず、業務の問題として扱ったことが、本件の転換点であった。
こうして構想策定から要件定義までの約6か月で、月間10万件の取引伝票を自動連携の対象とし得る業務・データ設計を固めるに至った。
私たちが提供したもの
本件で当社が担ったのは、SAPの標準機能に精通した人間が、業務の意味を判断しながらデータを整えるという役割である。テーブル構造への理解と、現場の担当者と対話しながら暗黙知を引き出す力の、両方を必要とする領域であった。
生成AIの普及により、データ活用の巧拙が経営の差に直結する時代に入った。一方で、AIに読ませるにせよ、基幹システムで自動化するにせよ、前提となるのはそのデータが業務上何を意味しているかが定義されていることである。ここは自動化の恩恵が最も及びにくく、そして最も後回しにされやすい領域でもある。
株式会社BeyondWellは、この領域を専門サービスとして切り出した。SAP黎明期から現場に立ってきたシニアコンサルタントが、アドオンで業務差異を吸収するのではなく、標準機能とFit to Standardの考え方に基づいて、データと業務の双方を整える。ツールの導入では届かない場所に、人の判断を置く。それが当社の提供価値である。
同様の課題についてのご相談
マスタの粒度不一致、属人化した運用、移行前のデータ整備についてのご相談を承っております。
※SAPおよびSAPロゴ、記載されているSAP製品・サービス名は、ドイツおよびその他の国におけるSAP SEの商標または登録商標である。
※本事例はクライアントとの守秘義務に基づき、企業名および業種等を一部特定できない形に加工して掲載している


